.. index:: にし あまね; 西周 .. _sensebegin: 「感覚」事始め =============== .. image:: MedhurstECsense.png :align: right :scale: 60% イギリス人宣教師、Walter Henry Medhurstは1830年に英和・和英語彙を作成している。彼はそれまで日本滞在歴がなく、中国語の智識を基礎に、入手できた限りの和書を解読して作成したものである。そこでは、"sensible"を「サトリ」、"to feel (mentally)"を「サトル」とする。サトルは、「悟る」ではなくて「覚る」である。同じ著者の"English and Chinese Dictionary"(1848)では、"the five senses"を五官、"sense of smelling"を「臭官」等としている(右図)。 最初の本格的な英和辞書という英和対訳袖珍辞書(文久2[1862]年刊行)の初版本は見ていないが、慶応3[1867]年の改正増補版では、"sensation"は「感覚(*)」"sense"は「意味、感(*)、道理、存寄、智覚」、"senseless" は「感覚なし」等々となっている (* 判読不能文字が続く)。 英和対訳袖珍辞書作成には、西周も参加していたという。西周訳、「心理学」(明治8[1875]年, 文部省)が、わが国最初の心理学書らしい。原著は、Joseph Haven, "Mental philosophy: including the intellect, sensibilities, and will."である。"sense"はときに「知覚」、ときに「感覚」と訳されている。これは、「感覚」の生理学(Physiology)的側面はほとんど扱っていない原著の性格にもよっている。